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研究室のプロフィール

作成日: 2011.05.05
更新日: 2016.07.24
 

1. キーワードは「意思決定」と「システム」

当研究室は,意思決定システム科学/システムズマネジメント(Decision Systems Science/Systems Management)を教育・研究のテーマとしています。個人のレベルでも,企業や政府など組織のレベルでも,私たちの生活は数多くの「意思決定」の連続ということができます。たとえば,今日の昼飯はどこへ行って何を食べようか,今度買う車はどれにしようとか,卒業したらどのような職業に就こうかとか,あるいは,次期の新製品はどのようなものにすべきかなど・・・すべて,意思決定の問題です。ただ,ある意思決定は単純かもしれないし,ある場合は,きわめて複雑で問題自身が何かさえわからないこともあるかもしれません。

私たちが取り組んでいるのは,特に複雑な意思決定活動をうまく取り扱う(マネジする)ための理論・方法論の開発とその実践をめざす学問領域の探究です。そこでは,必然的に,従来の文系・理系の枠を越えたいわば領域横断型のアプローチが不可欠です。実際の意思決定には人間が便宜的に導入した学問分野のなわばりなど無意味だからです。意思決定システム科学/システムズマネジメントは,そのようなアプローチとして特に,システムアプローチと呼ぶ方法に注目しています。これは,複雑な意思決定問題を,「木だけでなく森も見る」全体論の立場から「システム」として捉えようとする態度です。具体的には,数理的モデルからシミュレーションモデル,さらにはソフトシステムアプローチと呼ばれるいわば広義のコンサルティングの方法論までを取り扱い,理論と実践の両面から,幅だけでなく深さも備えた教育・研究を行っています。

この文脈での研究分野として、ハイパーゲーム分析を含む主観的な意思決定理論、合意形成学や紛争解決、コンフリクト解析などが射程に入ります。

なお,最近は,科研費や委任経理金以外にも競争的資金を導入し,科学技術振興事業団の社会技術研究推進事業プロジェクトや,文科省科学技術振興調整費の政策提言プロジェクトなど,社会とのつながりをもった研究も進めています。

特に,平成16年度21世紀COEプログラム「エージェントベース社会システム科学の創出」の中核として活動するようになって以来,社会的・国際的研究教育活動が急速に充実しました。

2. サービスシステム科学の提唱

特に最近は、サービス・サイエンス、サービス工学(SSMED)としてこの2・3年急速に発展してきた領域に、当研究室の強みであるシステム科学という学際的な視点から接近して「サービスシステム科学」Service Systems Scienceと呼ぶ新たな学問領域を開拓しつつあります。この試みは、SSMEDの提唱者でもあるIBMのDr Jim Spohrerをはじめとする米国IBMや、後者の代表的研究者であり前の ISSSの会長でもあったDr Gary Metcalfらとともに、国際的な枠組みの中で進めており、2008年以来毎年、東京で国際集中ワークショップを主催しています。

Jim SpohrerらとClosed Intensive Service Innovation Workshopを開催 2009.02

さらに、これらの研究を苗床として、文科省の受託事業の一環として特別教育研究コース「社会的サービス価値のデザイン・イノベータ育成プログラム」を展開しています。

3. ルーツをたどれば

私は,1996年に現在所属する価値システム専攻が発足したときに,大学院生時代から所属していた本学工学部経営システム工学科から異動しました。本研究室のルーツをたどれば,私が指導を受けた経営工学科(当時)の松田武彦(元本学学長)・高原康彦(本学名誉教授)研究室にたどり着きます。海外での研究との関係で見れば,ノーベル経済学賞のH.サイモンの直弟子である松田先生と,数理的システム理論の第一人者M.メサロビッチの後継者高原先生の流れを受け継ぎ,私の代でソフトシステムアプローチの提唱者P.チェックランドの考え方を導入してきたと位置づけることが出来ます。

Peter Checkland と早稲田大学にて 2003.12.

Mike Jackson夫妻と自宅にて 2007.8.12

しかし,重要なのは,将来に向けてそのような「遺伝子」を受け継ぎながらもいかに進化させてゆくかでしょう。それはひとえに,研究室に関係する若い人たちにかかっています。幸い,研究室には「多様性こそがシステムの存続・発展の不可欠要因」とのシステム論の基本テーゼ通りに,多様な人材が集まっています。出身分野(学科)に関していえば,直下に学部を持たないこともあり,今まで,学内外の機械系・電気系・材料系・情報系・数学,さらには米国の大学を卒業した日本人学生まで多岐にわたった学生が在籍しています。

平成23年度は,修士課程7名,博士課程3名(社会人2名、外国人国費留学生1名を含む)です。

徳安先生(法政大学)らとヘルシンキを訪問 2007.10.29

修了者は,コンサルティング業界を始めとし,情報系・金融機関・電気系など幅広い分野で活躍しています。なお,これまで,私の研究室での博士の学位取得者は11名(論文博士を除く、価値システム専攻としては9名)で,全員が大学に就職していることは嬉しいとともに,分野の重要性が認識されてきた現われと思っています(以上,経営システム工学科在籍時の実績を含む)。

3. めざすは「知的体育会系」

私たちの専攻は平成15年5月に新設の西9号館へ引っ越しました。この8階に当研究室があり,快適な環境で教育研究に励むことができます。

学生室の様子

もちろん,創造的研究を活性化するためには,研究室というハードウエアにも増して,研究室運営あるいは雰囲気といったソフトウエアが重要なのは当然です。
私が学生時代を過ごした研究室の雰囲気が,意識的にせよ無意識的にせよ,自分の研究室運営に影響することは確かでしょう。特に,現在所属する専攻は学部を
持たないので,修士課程入学時に始めて学生同士が顔を合わせ原則2年間で修了していくことになり,短いサイクルで運営していかねばなりません。

私が最近目指している研究室の雰囲気は,一言で言って,懇切な丁寧な教育指導と厳しいトレーニングに支えられた教育に手厚い「知的体育会系」研究室といったものです。修士論文作成に当たっては,1年間をかけて自らの興味のある分野に関する論文テーマを自律的に選定しますが,その間,広い範囲の研究を紹介する万全のサポート体制を敷いています。また,先輩たちの研究をさらに発展させることも,有用なテーマ設定の方法となっています。一方,研究室で行うゼミは数も量も多く,特にM1の学生には重要なトレーニングの場となっています。

あわせて,硬軟取り混ぜ様々なイベントも行っています。なかでも,春と秋の合宿(同様の研究に興味を持つ専攻を越えた学内3研究室と合同で30名以上が参加します)は,重要なイベントになっています。特に秋は,学年を貫く縦割りかつ研究室を貫く横割りのチームを作り,統一テーマに対しチーム対抗で考察を進め,最終的にプレゼンテーションを競います。修了生の話を聞くと,各チームのヘッドとなる修士2年の学生にとっては,社会に出てからのリーダーシップの鍛練の場となっているようです。また,夜を徹しての懇親会は,日頃の忙しさから離れ,教官と学生の関係を一段と深める楽しい機会となっています。

学位授与式を終えて研究室メンバー全員が満開の桜の木の下に集合

4. おわりに

「楽しくなければ研究ではない」をモットーに,様々なバックグラウンドをもった学生がGive and Given(すぐのリターンを期待せずに自らの得意分野を教えあう)の精神で集いあい,先生はその様子をしっかり把握しているものの過度に介入しない,そんな形を理想としてこれからも微力を尽くしたいと考えています。

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